EC事業者様にとって物流コストの削減は大きな課題ですが、その解決のために考えるべき要素のひとつが「物流拠点」です。物流拠点を考える際、集約型と分散型の2種類があります。分散型では配達先の近くから発送できるため、配送のリードタイムを短縮することが可能です。一方、集約型でもコストカットが可能な部分があります。
今回は、物流拠点を集約するメリット・デメリットと、物流拠点を集約する際に見ておきたいポイントについて紹介します。
【メリット】物流拠点を集約するとコストカットができる
物流拠点を集約するメリットは、次の3つです。
1.設備費・人件費が削減できる
2.配送効率の向上につながる
3.在庫管理しやすくなる
それぞれ、詳しく解説しましょう。
設備費・人件費が削減できる
物流拠点の集約がコストカットにつながる理由のひとつが、設備費・人件費が削減できることです。
これまで物流業界では、複数の物流拠点があったほうが配送先の変更やトラブルが発生したときに臨機応変に対応しやすく、コスト削減効果が高いといわれていました。
しかし、近年この考え方が変わってきており、とくに首都圏では物流拠点を1カ所に集約した大型物流施設を設ける企業が増えてきています。
物流拠点を複数設けた場合、それぞれの拠点で保管費や管理費、人件費などのコストがかかるからです。拠点ごとに適正在庫や発注点の設定が必要など、在庫管理の手間もかかります。
物流拠点が1カ所に集約されていれば、そのぶんの手間が削減できるほか、複数拠点と比べて在庫数を抑えられるため、キャッシュフローの改善にもつながります。
配送効率の向上につながることもある
物流拠点を集約して、配送効率の向上につながるケースもあります。
物流拠点が複数ある場合、各拠点に在庫を分散させる必要がありますが、在庫を保管できる量や在庫がなくなるスピードは拠点によって異なります。ときには拠点から拠点に在庫を転送・横持ちしなくてはならず、倉庫拠点間での連携がうまくいかなければ、輸送費や人件費といった余計なコストがかかることも多いのです。
物流拠点が1カ所に集約して在庫の転送・横持がなくなれば、配送効率が高くなる可能性があります。
ただし、出荷件数が多く物流の質が下がっている場合や、イベントやキャンペーンによって出荷件数が変動しやすい事業者様の場合は、分散出荷のほうがサービスの安定性を維持できる可能性が高いです。配送効率を高めたい場合は、自社の物流状況も見て決めることをおすすめします。
在庫管理しやすくなる
複数の物流拠点があると、全体で在庫がどれくらいあるのかが把握しづらくなります。在庫管理の方法はそれぞれの拠点に委ねられるため、適正在庫数を保てているのか、無駄なコストは発生していないかなどの確認がむずかしいケースもあります。
在庫管理がうまくいかず、売れ残って廃棄になると、それまでの管理費用がすべてムダになるうえに、廃棄にもコストがかかります。
一拠点に在庫を集約していれば、在庫管理方法の統一ができます。適正在庫数を把握しやすくなるため、余計なコストがかかることが減るでしょう。
【デメリット】物流拠点を集約すると配送におけるリスクが高まる
物流拠点の集約には、リスク面でのデメリットもあります。
具体的には、次の2つです。
・リスク分散しにくい
・リードタイムが伸びる可能性がある
・出荷件数の変動に対応しにくい
なぜ物流拠点の集約によって、配送リスクが高まるのでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。
リスク分散しにくい
物流拠点の集約によって配送リスクが高まる原因のひとつが、トラブル発生時のリスク分散がしづらくなることです。
複数の物流拠点があれば、どこか1カ所が自然災害や火災などの被害や事故に遭っても、ほかの拠点から発送するなどして対応できます。
しかし、物流拠点が1か所しかないと、何らかの理由で拠点に被害や事故が発生した場合のバックアップがないため、物流業務がストップしてしまうでしょう。
また、首都圏など競合が多い場所に物流拠点を集約すると、他社と従業員の取り合いになる可能性があります。他社よりも高い給与を提示しないと人が集まらず、複数拠点を設けるよりも人件費が高騰するリスクもあります。
リードタイムが伸びる可能性がある
近年、EC物流に求められる重要な要素に「配送スピード」があります。価格が同じ商品であれば、より早く届くECサイトのほうが需要は高いです。
しかし、物流拠点を集約すると、拠点と配送先の距離が延びてしまい、リードタイムが伸びるリスクがあります。即日発送、翌日配達になかなか適応できず、差別化が難しくなる点がデメリットといえるでしょう。
また、生鮮食品などスピーディーな輸送が求められる商品の場合は、リードタイムが伸びることで消費期限が切れたり傷んだりする可能性もあるため、拠点の集約はむずかしい場合が多いです。
さらに、物流拠点の集約によって拠点と配送先の距離が大幅に伸びると、配送費が高騰し、複数拠点を設けるよりもかえってコストがかかるリスクもあります。
出荷件数の変動に対応しにくい
EC事業者様では、イベントやキャンペーンによって出荷件数が大幅に伸びることもあるでしょう。倉庫を集約していた場合、その増え幅に対応できる量は倉庫ひとつ分です。
倉庫の保管スペースを超える量の注文が入った場合には、新規倉庫の準備が必要になります。その場合は、倉庫との提携だけでなく、システム連携に関する費用やオペレーションの指示にも対応しなければなりません。
このように、倉庫を集約していたために柔軟な対応が難しく、新しい取り組みに踏み出しづらくなることも、デメリットのひとつといえます。
ひとつの物流拠点へ集約するときに見るべきポイント
メリット・デメリットを考慮したうえで物流拠点を集約すると決めたら、次に悩むのが「どこに集約するか」ではないでしょうか。そこで、物流拠点を集約する際に見ておきたいポイントを紹介します。
契約面積の有効率
物流拠点の集約先を選定する際にまず見ておきたいのが、契約面積の有効率です。このとき、「契約面積=使用可能なスペース」ではないことに注意しておきましょう。
建物の庇(ひさし)や塔屋(とうや)なども含めた面積が表示されていることがあるため、単純に契約面積だけを見て集約先を決定すると、スペースが足りなくなるおそれがあります。実際に使える面積と保管方法も含めて、物件図面資料や賃貸借契約書を物流事業者としっかり確認しておきましょう。
立地条件
集約先の立地条件も重要なポイントです。以下の要素を押さえて、最適な場所を探しましょう。
・顧客のエリア分布
・駅などの位置
・地価
・法規制の有無
・高速道路の有無
・本社や他部門との位置関係 など
物流拠点と配送先までが遠いと配送コストが上がってしまうため、顧客のエリア分布をチェックして、できるだけ近い場所にしたいところです。しかし、配送先が都心部に集中している場合、近くに拠点を設けると契約費用が高額になります。
一方、駅や高速道路から離れた辺鄙な場所を選ぶと、従業員が通勤しづらかったり、大型トラックで一般道を長距離移動することになったりして不便でしょう。
集約する拠点を探す場合、利便性・費用ともに理想がすべて叶う倉庫はそうそう見つかりません。これまでの物流コストの内訳などをふまえ、どの要素を重視すべきか、優先順位をつけることをおすすめします。
費用対効果
物流拠点の集約のメリットはコストが削減できることですが、前述のとおり、集約場所の立地などによっては、思うような効果が得られなかったりかえってコストが高くなったりします。
多少コストが上がっても、運用効率が大幅に良くなるなどの一定の費用対効果が得られるのであれば、集約する意味はあるでしょう。
しかし、あまりメリットが得られない場合は、複数拠点のままにしておいたほうが良いかもしれません。集約した結果かかるコストが適切かどうか、じっくり検討することが重要です。
ここまで解説したとおり、物流拠点の集約にはデメリットも存在します。災害の多い日本では、物流拠点の集約が大きなリスクになる可能性も考慮しなくてはなりません。
複数拠点のままにしておくか集約するか決められない、自社に最適な物流拠点へ委託したいとお考えの方は、株式会社はぴロジにご相談ください。株式会社はぴロジでは、取扱商品の性質やオペレーション方法に応じた物流事業者様を紹介し、短期間で質の高いオペレーションを構築するサポートを行っています。
まとめ
物流拠点を集約すると、設備費や人件費の削減、配送効率の向上などによって、コストカットすることが可能です。
しかし、集約先の立地などによっては、これまでよりもコストが上がる可能性があります。また、災害時のバックアップがなくなるなどのリスクもあるので、今回紹介した要素もふまえて、最適な物流拠点を検討してみましょう。
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