国内のEC市場は拡大し続けており、事業の拡大を考える企業も増えてきています。EC事業者の中には、事業を拡大する上でさまざまな問題に直面している企業も多いのではないでしょうか。たとえば大型商品を取り扱うECサイトの場合、商品の状態を最高に保ちつつ確実に届けることが重要であり、EC事業を拡大していく際には物流の高度化や効率化が求められます。そこで今回は、大型商品を取り扱うEC事業において、アウトソース先を切り替えるべきタイミングとポイントについて考えていきます。
大型商品を取り扱うEC事業が拡大する際に起こること
大型商品を取り扱うEC事業を拡大しようとすると、さまざまな問題が起こってきます。その1つに、曜日や季節要因による需給の波が挙げられます。たとえばエアコンなどの空調機器は、購入が特定の時期に集中しやすい上、配送や設置にどうしても時間がかかってしまいます。家電大型専門店では、年度末や年末年始、夏季に購入が集中しており、さらに来客数は週末がピークになることから、それを受ける物流も必然的に曜日による変動が大きくなります。物流センターや店舗の荷物受入、荷役が一時的にキャパシティを超えてしまったり、空調等の工事業者の作業キャパシティを越えてしまうケースがあり、物流の滞りや販売機会の損失につながりかねません。また、家電製品は繊細に取り扱う必要があり、配送の際にはダメージ等への対応も求められます。
次に大型商材ならではの問題として、保管スペースを取られることが挙げられます。これにより、倉庫の確保が課題になってきます。大型商品は配送料金も高額な上、そもそもピーク時は配送キャパシティの確保が難しいことから、自社投資の場合はピークに張り付かせ、閑散期には余剰を抱えるケースが多くなっています。
自社運用で大型配送を行う場合、販売拡大のボトルネックは保管スペースの問題だけではありません。大型の荷物を出荷作業する従業員の体力やモチベーションについても気にかける必要があります。回転数の良い商品を入れれば保管効率は上がりますが、出荷作業自体に限界が来てしまう場合もあり、根本的な解決にはなりません。
大型商品を取り扱うEC事業の拡大時にぶつかる物流課題
大型商品を取り扱う際の物流課題としては、前述した通り季節波動による出荷作業量の増減への対応が挙げられます。たとえばピーク時の配送車両の確保、出荷作業員の体力やモチベーション低下の対策、送料や作業費用の値上げについても考えなければなりません。
佐川急便では、このような流れを踏まえて2020年5月に大型家具・家電設置輸送サービスの料金等を変更すると発表しました。6月以降は設置料金の名称を配送料金に変更し、配送料金のサービス範囲を軒先までの配送に限定。現在は、簡易的な設置や梱包資材の持ち帰り等の作業については、オプションとして15分1,650円の付加作業料金で引き受けています。
大型商品を取り扱うEC事業の拡大時にアウトソース先を切り替える判断基準
では、大型商品を取り扱うEC事業を拡大する際、どのような判断基準で物流のアウトソース先を切り替えれば良いのでしょうか。
まず第一に、出荷作業、配送や保管スペースの確保において限界を感じたら、アウトソース先の切り替えを検討すべきです。同じように、販売量の増加も従来の物流システムではまかなえなくなる可能性があります。大型商品はただでさえ物流がパンクしがちなので、それに加えて取扱個数が増加してしまうと従来のアウトソース先では対処しきれません。なお、物流は一部商品のみアウトソーシングすることも可能なので、大型商品だけアウトソースするなど、状況に応じて検討する必要があります。
大型商品を取り扱うEC事業の拡大時にアウトソース先を切り替えるタイミング
ここからは、実際に物流のアウトソース先を切り替える場合、どのようなタイミングで切り替えるべきかを紹介していきます。
・高回転の商品が複数出てきた時
まず考えられるのは、高回転の商品が複数出てきた時です。前述した通り、物流は一部商品のみアウトソーシングすることも可能なので、特定の商品だけアウトソース先を切り替えるというのも1つの方法です。
・新商品の入荷
次に考えられるのは、新商品が入荷されたタイミングです。長きにわたって取り扱っている商品の場合、既存の物流から変更するのは手間の方が多いかもしれません。そこで新商品を入荷した際に、そこから徐々にアウトソース先を切り替えていくというのも1つの案です。
・従業員の離職、採用が思い通りにいかない
ここまで商品に絞ってアウトソース先の切り替えタイミングを考えてきましたが、物流に携わる従業員の変化に伴う切り替えも考慮すべきです。従業員の離職が目立ったり、採用面で思い通りにいかないなど、何かしら人材面で問題を抱えていたら、そのタイミングでアウトソース先についても考えてみましょう。
・保管場所の契約更新
保管場所の契約更新時期もアウトソース先を見直す良い機会です。それまで契約していた保管場所のクオリティが悪かったり、倉庫の場所が拠点から離れているなど、保管場所について何かしら不満を抱えていたら、アウトソース先の切り替えを検討してみてください。
・作業品質のばらつきによるクレームの増加
大型商品は、商材自体が大きいだけでなく、形状もバラバラで取り扱いが難しいジャンルだと言われています。家電に限ってみると、テレビや冷蔵庫のような大物からバッテリーのような小物類まで同時に扱わなければならず、しかもそれらは精密機器で単価も高いため、専門の業者でなければ取り扱うのは難しいでしょう。よって、消費者からのクレームに悩まされているEC事業も少なくないのではないでしょうか。作業品質のばらつきによるクレームが増加したら、すぐにアウトソース先の切り替えを検討すべきです。
・送料の値上げ
送料の値上げもアウトソース先を切り替える大きなきっかけになります。ただでさえ負担になる物流コストを抑えるには、よりリーズナブルな価格で請け負ってくれるアウトソース先を探すべきです。今は次々と新しい物流専業者が出てきているので、本当にそのアウトソース先がベストなのか、今一度考えてみましょう。送料の急騰によって事業が圧迫されている場合は、複数倉庫をコントロールして最寄りの倉庫から分散出荷してくれる物流アウトソース先を選んでみてください。
大型商品を取り扱うEC事業の拡大時のアウトソース先の切り替え方
アウトソース先を切り替えることになった場合、どのように進めれば良いのでしょうか。ここからは、具体的なアウトソース先の切り替え方を紹介していきます。
まずはじめに、繁忙期/閑散期の波動対応の確認をしましょう。その上でいつ切り替えるのか、今後どのように対応していくかをアウトソース先の物流業者と話し合いましょう。
次にアウトソース先の配送総量の限界を確認してください。それによって、どれだけその物流業者に依頼できるのかを、事前に把握しておくことができます。
また、アウトソース先はすべて同一拠点にする必要はありません。一部商品のみ複数拠点で出荷することも可能です。その場合は、複数拠点にする商品の選定を行いましょう。同時に、複数拠点化した時のメリットとデメリットも確認してください。一般的に、メリットはリードタイムの短縮、出荷遅延や災害リスクの回避などが挙げられます。一方、考えられるデメリットには、コスト増加や品質のばらつきが挙げられます。最後に倉庫作業の品質の確認も忘れずに行ってください。これを怠ると、後にクレームにつながりかねません。
大型商品の物流アウトソース先を上手に切り替えていくために
物流のアウトソース先を切り替えるとひと言で言っても、順を追って行わなければ従来の物流業務に支障をきたしかねません。今回挙げたような流れで問題点を洗い出し、具体的なアウトソース先の切り替えまで行ってみましょう。
大型商品を取り扱うECの物流アウトソース先を切り替える際の判断基準
アウトソース先の切り替えを検討するタイミングの多くが、販売量が一気に増加した時です。大型商品はただでさえ物流がパンクしがちなので、それに加えて取扱個数が増加してしまうと従来のアウトソース先では対処しきれなくなります。そこで、低コストで受注出荷業務をより自動化できる物流プラットフォームや、提携倉庫数が多く全国をカバーしている物流業者を再度検討しましょう。送料の急騰によって事業が圧迫されている場合は、複数倉庫をコントロールし、最寄りの倉庫から分散出荷してくれる物流アウトソース先を選んでみてください。