せっかく受注が入っても、在庫切れが続くようであれば顧客が離れてしまいます。かといって在庫を増やしすぎても、品質(鮮度など)や管理コストの問題が生じるため、安易に入荷量を多くするのは危険です。
失注とコストの両方のリスクを軽減するためには、適正在庫を意識する必要があります。従業員の経験や感覚ではなく、データで正しく適正在庫を測る方法が、「在庫管理期間」と「在庫回転率」の算出です。 ここでは「在庫管理期間」と「在庫回転率」について、詳しい計算方法とともに紹介します。
在庫回転期間は販売効率を示している
すべての商品の在庫が、バランス良く売れることはあり得ません。仮に1種類の商品のみを取り扱ったとしても、ばら売りとセットでは売れるスピードに差が出ます。
売れる頻度を考慮せず定期的にすべての商品を同量入荷させ続けていれば、一部の商品は不良在庫を多く抱え込むことになります。一方、人気商品は入荷が追いつかず、失注するリスクが生じるでしょう。
このような事態を防ぐために、商品ごとの在庫回転期間を理解したうえで、必要な商品を必要な数量のみ入荷させることが求められます。在庫回転期間は、各商品の販売効率を知るためにも欠かせない情報です。
たとえばバッグの在庫20個が完売するまでに3週間かかる場合、見方を変えると3週間はバッグの在庫がなくなる可能性は低いとも言えます。完売期間の予測を目途にバッグを入荷し続ければ、イレギュラーが起こらない限り販売を維持できるうえ、余計な在庫を抱えるリスクが少なくなるという考え方です。
在庫回転期間とは?
在庫回転期間とは、商品の入荷から出荷までの期間を表す指標です。在庫回転期間が長ければ商品の入荷から出荷までのスピードが遅く、短ければスピードが速いことを意味します。 在庫回転期間の計算式は以下のとおりです。
【在庫回転期間の計算式】 在庫回転期間=棚卸資産÷売上高(もしくは売上原価)
棚卸資産(在庫の商品)の合計金額と売上高から算出するため、棚卸資産回転期間とも呼びます。より正確に計算するためには、売上高よりも売上原価を用いると良いでしょう。
たとえば1個1,000円のポーチが1年間で50個売れた店舗で、現在のポーチの棚卸資産(在庫数)が10個あった場合、以下の計算式となります。
・1年間で売れたポーチの売上高 1,000円×50=50,000円
・現在のポーチの棚卸資産 1,000円×10個=10,000円
・上記2つを在庫回転期間の計算式に当てはめた場合 10,000円(棚卸資産)÷50,000円(1年間の売上高)=0.2(ポーチの在庫回転期間) |
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上記のケースでは、0.2年(約2.4ヶ月)で棚卸資産分のポーチ10個が売れるということになります。
在庫回転率との違い
在庫回転期間が「在庫が売れるまでにかかる期間(何日分の在庫があるか)」を表すのに対し、「一定期間にどれくらい在庫が入れ替わったのか」を表すのが在庫回転率です。
たとえば100個の在庫がある店舗で1ヶ月のうちに50個売れ、新たに50個同じ商品を仕入れた場合、在庫数は当初と同じ100個ですが、そのうちの50個は入れ替わっています。
このように、一定期間で在庫が何回入れ替わったのかを示す指標が、在庫回転率です。 在庫回転率の計算式は以下のとおりです。
【在庫回転率の計算式】 在庫回転率=売上高÷在庫高(棚卸資産)
在庫回転期間と同じポーチの例で計算すると、1年あたりの在庫回転率は以下のとおりです。
・1年間で売れたポーチの売上高 1,000円×50=50,000円
・現在のポーチの棚卸資産 1,000円×10個=10,000円
・上記2つを在庫回転率の計算式に当てはめた場合 50,000円(1年間の売上高)÷10,000円(棚卸資産)=5(ポーチの在庫回転率) |
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上記の計算によると、ポーチの在庫は1年間で5回入れ替わることが分かります。在庫回転率は高いほど在庫の入れ替わりが早い人気(売れ筋)商品で、低いと同じ在庫が売れずに滞留し続けていることを意味します。
在庫回転期間と在庫回転率を把握すべき2つの理由
在庫回転期間と在庫回転率は、どちらも「在庫がどの期間でどの程度売れたのか」を表す指標であることに違いはありません。在庫が効率良く回転しているのか、現在の在庫が何ヶ月分にあたるのか、どちらを主軸に考えるかの違いです。
効率良く在庫を回すためには、一方のみならず両方を把握する必要があります。抱えている在庫が何ヶ月分あるのか、回転率に変化はないのか確認することで、売れ筋商品の変化を見逃さずに済むためです。
売れ筋商品の見極めができる
在庫回転期間と在庫回転率から算出したデータを参考にすると、複数種類の在庫のうち、どれが現在の売れ筋でどれが不良在庫となりつつあるのかを判断できます。
たとえばバッグの在庫回転期間が1ヶ月で、ポーチは2ヶ月と算出された場合、バッグのほうが2倍早く売れている状態です。さらにキャリーケースの在庫回転期間が5ヶ月だったとすると、キャリーケースよりもバッグの品揃えや在庫数を増やしたほうが、売上アップにつながる可能性があります。
売れている商品がリアルタイムで分かれば、品揃えを改善するだけではなく、より売上を伸ばすための広告を効果的に発信できるでしょう。
余剰在庫を防ぐ
商品には売れ筋となる期間に波があり、永久的に好調な売上が続くものではありません。リアルタイムで在庫の回転効率を把握しておくと、売上を伸ばすだけではなく、損失が大きくなる前に不良在庫を処分することもできます。
在庫回転期間や在庫回転率を参考に、倉庫に滞留している商品を仕分けると、売れにくい商品の仕入れ量を減らして過剰在庫を防ぐことにつながります。生産から手掛けている場合は生産量を見直したり、在庫回転率によっては受注生産にしたりと、販売方法そのものを見直すきっかけにもなります。
在庫回転期間と在庫回転率を適正化させるには
在庫回転期間と在庫回転率は、倉庫内の限られた保管スペースを効率的に活用するためにも重視すべき数値です。算出結果をもとに、最適な数値になるよう策を講じましょう。
在庫回転期間と在庫回転率を適正化させるポイントは次の3つです。
1. 目標を設定しこまめに確認する
現在の数値のみを見ても、適切な判断は下せません。あらかじめ目標を設定したうえで、回転率が低くなるなどの「好ましくない変化」が起こっていないか定期的に確認することが重要です。
目標を設定する際は、過去のデータを参考に適正な数値を見出しましょう。これまでの売上動向から明確な目標を商品ごとに細かく設定します。上記の計算式では1年単位の数値を算出しましたが、1ヶ月単位などこまめな目標設定や数値の確認もおすすめです。
算出した在庫回転期間や在庫回転率をもとに、目標の修正やリードタイムの見直しなど、具体策を実践しましょう。
2. 不良在庫を減らす
回転期間が長い商品や回転率の低い商品は、多く抱えるほど保管コストがかさみ、不良在庫となります。より回転期間や回転率の良い商品に保管スペースを広く割くためにも、回転が鈍い在庫は値下げや処分で早急に手放すことを検討しましょう。
とはいえ、現場で個人の判断に任せると、不良在庫の見極めが曖昧になってしまいます。そこで、「滞留期間が3ヶ月以上となった在庫は値下げをする(処分する)」など、あらかじめ判断基準を明確にしておく方法も有効です。
3. 管理システムを導入する
複数拠点に倉庫を所有している場合など、在庫管理が容易ではないケースは多くあります。ヒューマンエラーのリスクも視野に入れると、適正な在庫管理を行うには管理システムの導入がおすすめです。
自動出荷管理システム(OMS+WMS)「logiec<ロジーク>」なら、自動で複数拠点の倉庫の実在庫数を一元管理できるだけでなく、近隣から最適な倉庫を選んで効率的な出荷指示を行うこともできます。 さまざまなカート・モール・受注管理システムやWMS(在庫管理システム)の媒介となるため、システム投資にかかるコストを抑えながら業務効率化を図りたい事業者様に最適です。
まとめ
商品の品質を落とさないためには、適正な在庫管理が重要です。また、欠品による機会損失を最小限に抑える意味でも、在庫回転期間や在庫回転率をふまえた計画的な入荷を行う必要があります。
適正な在庫管理を効率的に行うなら、自動出荷管理システム「logiec」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。OMS+WMS一体型のシステムで複数拠点の在庫も一元管理できるうえ、あらゆるカート・モール・他社受注管理システム(OMS)や他社倉庫管理システム(WMS)に対応できるため、既存システムを無駄にしたくない方にもおすすめです。